『DIAMOND online』にて記事連載中!!

自分の話をしているのに、なぜ主語が”you”なの?

英語の二人称代名詞の”you.”
「あなた」(目の前にいる相手)を意味する言葉ですが、”you”が示すのは「あなた」でないこともあります。

先に答えを言ってしまうと、総称人称(不特定の複数の人を指す代名詞)として使われる場合、“you”は「人々一般」を表します。

目次

  1. “You”は「私」????
  2. 代名詞は深い・・・
  3. 英語は主語が必要だけど

“You”は「私」????

Netflixのビリオンズというドラマに、こんなセリフが出てきました。

I quickly learned that’s not the case, but you still hope 
(字幕:現実を知っても望んでしまう)

ある登場人物が自分の仕事について、「描いていた理想とは違う」と打ち明け話をする場面でのセリフです。

大好きな仕事だからこそ理想と違う現実を突きつけられると辛いんですよね・・・。それでも、理想を目指したい気持ちは捨てきれない。
わかるわ〜。
共感しまくりの私です。あ、話が逸れました。

さて、この文章。
文脈を考えると、理想と違う「現実を知った」のはです。そして理想を「望んでしまう」のも

でも、原文を見ると、文章の前半部分は “quickly learned that is not the case”と、“I”が主語になっていますが、but以下の後半部分を見ると”but you still hope”と、主語が”I”ではなく”you”になっているんです。

自分の話をしているはずなのに、主語は”you”

なぜ????

画像1

実は、この場合の”you”は総称人称として使われているので、特定の「私」や「あなた」ではなく、「あなた」も「あの人」も「この人」も、みーんな、つまりは不特定のピーポー(=人々一般)を指しているんです。

「ピーポー」というのは訳出としてイマイチなので(・・・っていうか英語をカタカナにしただけで訳してないし💦)、自然に訳すとしたら「皆」「誰でも」などでしょうか。他にも「人とは」などなど、文脈によっていろんな訳し方がありそうです。

もう一度先ほどのセリフを見てみます↓

I quickly learned that’s not the case, but you still hope.
(字幕:現実を知っても望んでしまう)

字幕では主語は省略されていますが、敢えて主語を入れて訳すとしたら、「私は現実は(理想とは)違うと知ったけど、それでも望んでしまうものでしょ」という感じでしょうか。

代名詞は深い・・・

そういえば、日本語で不特定の誰かを指す場合に「みんな」って言いますよね。「みんな言ってる」とか「みんなそう思ってる」とか・・・。子供の頃に「みんな持ってるから買って」と親におねだりしたら、「みんなって誰?」と突っ込まれて、一人か二人くらいしか名前を挙げられず困ったことを思い出します(苦笑)。

不特定の誰かを示す総称人称には、Youの他にもwe, people, they, oneなどがあります。「自分」が含まれているニュアンスが強い順で並べるとwe, you, people, theyでしょうか。(あくまで私の感覚です)。

“one”を総称人称として使うのは、文語では一般的ですが会話の中で使うと、ちょっと堅苦しい印象になります。

上のセリフは「but you still hope(それでも望んでしまう)」と、”I “でもなく”we” でもなく、”you”を主語にして自分とは一見切り離した言い方をしながら、ほかでもない自分の気持ちを話し、そこには「人ってそういうものでしょ」と、相手に共感を求める気持ちも伝わってきます。うーん、深いなぁ。

英語は主語が必要だけど

英語は日本語と違い、基本的に主語が必要です。通訳をしていると、主語を省いた日本語の会話は英語に訳すのに苦労することがあります。前後の文脈から想像力も働かせながら適切と思われる主語を補ったりするのですが、話し手が唐突に「あれさー、問題なんだよね〜」とか言い出すとお手上げです。「あれ」が何で、誰にとっての問題なのか、、、話がさっぱりか分かりません。困ります。(実話です。)

日本語で主語を省略するのは、責任の所在を明確にしたくない文化も影響しているのかしらと思ったりもしますが、英語でも敢えて誰であるかを特定しない話し方は存在していて、そういう場合は総称人称を使う(そして、それが誰を示しているのか明確でない)ことが多いです。

“They say the Martians are coming”(火星人が来るらしいよ)など、誰が言ったんだか良く分からないけれど「なんか、そういう話になってる」的な巷の噂や都市伝説(?)にも総称人称を使います。

“they”を総称人称として使う場合は、「私は聞いただけで話の出所は私じゃないわよ」など、「私は除く」ニュアンスが感じられます。日本語の「みんな」に近い気がするのですが、いかがでしょう???(ご意見あったら是非お知らせください。)

…などと考えながら、自分が英語を話しているときに自己観察していたら、あるある!私、総称人称の”you”を連発してる!!しかも全く無意識でした・・・汗。
そして、総称人称で”you”を使う場合は、「あなただって私の立場だったら同じこと思うでしょ?」と、話している相手に共感して欲しい場合が多いことにも気付きました。

実は、この「自分の話をしているのに、なぜ主語が”you”なの?」という疑問は、英語コーチングのコーチー(コーチングを受ける人)からセッション中に出てきたものです。

英語の勉強を兼ねて海外ドラマを見る」ということを学習プランに入れたのですが、実際にめちゃくちゃ洞察力を働かせて細かいところまで見ていることに感心しました。私も見習いたいと思います。ホントに。

代名詞の使い方は英語も日本語も考え始めると本当に奥が深いです。ご興味ある方は、ドラマでも何でも良いので、会話を意識して観察してみてください。そして、面白い発見があったら教えてください〜!