『DIAMOND online』にて記事連載中!!

英語リスニング強化トレーニング〜更に鍛える編

前回までのおさらい

前回は、今のリスニング力をワンランクアップさせて「なんとなく不安」から脱却するための「ちょっと頑張る編」をお伝えしました。レベルアップのためには聞き流すだけではなく、英語のリズムを体得するためにシャドウイングをしたり、字幕などを確認しながら音に集中して聞けていない音を発見していくことで、英語を聞く「耳」が育つということをお伝えしました。
お勧めのトレーニングは以下の通りです。

・シャドウイングで英語のリズムを体に刻む
・映像コンテンツの字幕を「英語」に設定し、字幕を目で見ながら「音が聞き取れているか」を確認しながら聞く。
・「聞き取れていない音」を見つけたら、その音を聞くことに意識を集中して聞けるようになるまで繰り返し聞く。
・聞き取れていない音の発見にはディクテーションも効果的!
・一日5〜10分で良いので「英語の音」と真剣に向き合い、自分が聞き取れていない音を発見して聞けるようになるまでトレーニングすることで耳を育てる

リスニングを更に鍛えたい方へ

今回は、更に鍛えたい方に向けたトレーニングをご紹介します。実は、このトレーニング方法は私が通訳者になってから我流で編み出したものです。

通訳として仕事をする上で、複数形の[s]や、[a]と[the]の違いなど細かい部分を聞き分けられないことで意味を取り間違えてしまうのではないかという恐怖心から必要に駆られて必死でやりました。

もしかしたら、英語を仕事にしようという人でなければ、ここまでのトレーニングは必要ないかもしれません。ただ、私は今回ご紹介するトレーニングを実際にやってみて、もっと早く知りたかった、気づくのにこんなに遠回りせずに済んだらどんなによかっただろうとも思いました。

なので、英語のリスニングに悩む方にとって参考になれば嬉しいという思いでお伝えします。

お勧めのトレーニング

今回ご紹介したいのは、発音記号を確認して頭で音を理解するというものです。

前回のトレーニングで字幕などを使って耳で聞いている英語を文字で確認して「自分が聞き取れていない音」を見つけるというトレーニングをご紹介しました。文字で確認しながら英語を聞くことで、自分が聞けていない英語の音や聞き落としてしまう単語を把握することが「なんとなく不安」を克服するのに重要だからです。

今回は、更にそこから一歩進めて、「聞き取れない部分」が特定できたら、その単語を辞書で調べて発音記号で「音を理解する」というトレーニングをします。

辞書は発音記号が記載されているものであれば何でも構いません。(通常の辞書には発音記号が載っているので、殆どの方はお手持ちの辞書で大丈夫かと思います)

例えば、[cat]という言葉を辞書で調べてみると、こんな風に記載されています。

[cat] 発音記号・読み方
kˈæt(米国英語)

[cat]という単語の発音記号の[kˈæt]を確認しながら、[cat]の音声を再生します。

電子辞書や単語のネット検索であれば、音声が出るものが多いので、そういった機能を活用しても良いです。ただ、電子辞書の音声機能は再生スピードが速すぎることが多いので、音声速度はなるべく遅いものや、速度を調整して再生できるものが見つかると良いですね。

発音記号を見ながら音声を再生して、自分が「聞き取れていない音」をじっくり聞いてみてください。「聞き取れていない音」は日本語にはない音であることが殆どです。[cat]の例で言えば、[kˈæt]の[æ]という音は日本語には存在しません。

自分が普段使っていない音が聞こえないのは、ある意味当然なのです。そのため、「聞こえていない音」は発音記号で確認しながら学んでいく必要があります。

最初は発音記号を見ながら、その発音記号の「音」を聞くことで、それぞれの発音記号が示す音を学ぶ必要があります。でも、一通り覚えれば発音記号を見れば、音が分かるようになります。

ちょっと・・・いや、かなり面倒な作業です💦

英語の音声に特化した教材で発音記号の解説も読みながらその音について理解するとより分かり易いと思います。

お勧めの教材をよく聞かれますが、個人的には「英語耳」は使ってみて良いと思いました。一つ一つの音が丁寧に説明されていますし、解説も分かり易いです。なにより当時は英語の音に特化した教材は限られてたので海外から取り寄せたりもしましたが、英語耳が発売されてお手頃価格で良い教材が出たなと思ったのを覚えています。

改訂3版 英語耳 発音ができるとリスニングができる
単行本 1,760円(2023年9月23日時点)
松澤 喜好 (著)

ただし、私が英語の「音」のトレーニングに真剣に取り組んだのは10年以上前のことなので、今はもっと良い教材も出ているかもしれません。ご自身で使いやすいと感じるものを選んでください。

選ぶ際のポイントは以下の通りです
・発音記号の解説がある
・音声教材がついている
・発音するときの解説も載っている(スピーキングの訓練にも使えるので)

発音記号で自分が「聞き取れていない音」の成り立ちを頭で理解できたら、英語コンテンツに戻って「聞き取れなかった」部分を、もう一度聞いてみましょう。

「やっぱり聞き取れない」という方は、発音記号をみて頭で理解した通りの音が聞こえるスピードまで再生速度を落として聞いてみましょう。

「英語のスピードについていけない」という方も多いのですが、音が聞けるようになるまでは、トコトンスピードを落として聴けるまで繰り返し聞くことをお勧めします。

「スピードについていけないのにゆっくり再生?」と思われるかもしれません。そうです!スピードについていけないということは「一つ一つの音が正確に聞こえていない」ということも原因の一つなのです。なので、聞こえるまではゆっくり再生して、聞こえるようになったら徐々にスピードを上げていきましょう。

フォーカスして欲しいのは、「音が聞けているかどうか」です。リスニングの訓練なので、あくまで意識すべきは「聞きとれているか」です。「文脈から意味が分かった」ではなく「音が聞きとれているか」に全力の注意を向けてください。

「音は聞きとれたけど意味が分からない」という部分は、この際スルーしてもオッケーです。でも、「音は聞き取れなかったけど前後の文脈から意味は分かった」という場合はスルーしてはいけません。

「聞き取れない音」を突き止めたら、その単語の発音記号を調べて、「どんな音なのか」を頭で理解した上で「ゆっくり再生」しながら集中して聞いてみて欲しいのです。発音記号と照らし合わせて音を分析するくらいの気持ちで聞いてください。

やっているうちに段々と聞き取れるようになります。(本当です!)
そうしたら少しずつスピードを上げていきましょう。

大人が英語を学ぶときに必要なこと


ここまで読んでお気づきでしょうが、これはかなり面倒です(苦笑)。しかも効果を感じるまでには、ある程度続ける必要があります。

なぜ、こんな面倒なことをお勧めするのかというと、発音記号を調べて「音の成り立ち」を頭で理解することで「英語が聞けるようになる」からです。

日本語と英語の音の成り立ちは違います。子音+母音(あるいは母音のみ)で成り立っている日本語の発音と異なり、英語は子音だけで独立した音や、二重母音などが存在します。しかし、日本語で育った我々は、基本的に頭の中の「音のポートフォリオ」が子音+母音(あるいは母音のみ)で出来ています。いってみれば子音だけの音や二重母音の発音を認識するための「レセプタ(受容機能)」が存在していないのです。(注:あくまで私の経験に基づいた感覚的な話です。)

英語の発音を聞くのは、もちろん「耳」です。でも物理的に音が聞こえても認識できない音は「聞き取れない」のです。そのため、レセプタが存在しない状態で一生懸命に英語を聞こうと頑張っても、「聞き取れない」「リスニング力が上がらない」という事態に陥ってしまいます。これを解決するには自分が聞き逃している音を突き止め、その音を認識できるよう訓練することが必要なのです。その訓練方法の一つが、発音記号を確認し「音の成り立ち」を頭で理解した上で、スピードを落として音を確実に聞きとることです。自分が「聞き取れない音」を意識して、注意深く繰り返し聞くことで、「日本語には存在しなかった音のレセプタ(受容機能)」が出来てきます。

子供は語学を習得するのが早いと言われますが、大人になってから新しい言語を学ぶのは確かにいろいろなハンデがあります。その一つが「音のレセプタ」が存在していないということだと私は思います。大人になってから母国語でない言語の「音」を正確に聞けるようになるためには努力が必要です。

私自身の経験では、発音記号などで「音」の構造を理解することで、これまで聞き取れなかった音を意識するようになり、聞き取れなかった音が段々と聞こえるようになってくると感じています。

「更に鍛える編」のまとめ

・「聞き取れない音」を見つけたら、発音記号を確認し音の成り立ちを理解する。
・音を頭で理解した上で、耳が聞き取れるまでスピードを落として聞く。
・音が確実に認識できるようになるまで繰り返し、少しずつスピードを上げて聞く。

リスニング力強化のために

リスニング力強化トレーニングとして「まずは続ける編」「ちょっと頑張る編」「更に鍛える編」を3回に分けてご紹介しました。敢えて「初級」「中級」「上級」などのレベルで分けていないのは、仮に「リスニングレベル」が同じであったとしても、その日のコンディションや内容によって使い分けて欲しいからです。

例えば、「今日は疲れているから負荷の軽いまずは続ける編のトレーニングをやろう」とか、「まずは続ける編」で一度やってみたコンテンツを、次は「ちょっと頑張る編」のやり方でもう一度やってみるとか(同じコンテンツを繰り返し使ってトレーニングするのもお勧めです!)、休日は「更に鍛える編」にチャレンジしてみるとか、自分のコンディションやニーズに合わせていろいろ試しながら続けて頂けたら嬉しいです。語学はある程度は継続しないと効果が出ません。続けるためにも英語トレーニングはチャレンジレベルが違うメニューを用意して、工夫しながら継続してくださいね。

「英語の音」は本当に悩ましい課題です。英語コーチングでも効率の良いトレーニング方法を相談されることが多いのですが、「効率」を追求するのであれば自分の弱点を認識して克服するというのが、自分自身のニーズに合ったトレーニングができる一番の方法だと思います。地道な努力が必要かもしれませんが、「聞き取れない音ハンター」と化して、自分が「聞き取れない音」を突き止め、意識的に鍛えてください。英語の「音」に集中して意識しながら聞くことを続けているうちに「聞き取れる音」が一つずつ増えていくのが実感できると思います。

それでは、ごきげんよう〜♪

Voicyでも同じテーマでお話しています!

2件のコメント

「音は聞き取れなかったけど前後の文脈から意味は分かった」という場合はわかったからいいと思ってました。何となくわかる単語は確実に自分のものにしていくって事ですね。
ドラマや映画で聞き取りをしててもスペルがわからないので教材として例えばどんなものを使えばいいでしょう?

コメントありがとうございます!
「何となくわかる状態」から「確実に理解できる」ところにレベルアップする時には一頑張りが必要なんですよね。
聞き取りをしてもスペルがわからない時には英語の字幕が出るコンテンツが便利ですよ。私もNetflixなどを英語で聞きながら英語の字幕を確認しています。(確実に分かるまで、何度も同じ箇所の再生を繰り返したりしています・・・汗)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です